No.487
古代ローマの新しいゲーム
Neue Spiele im alten Rom
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プレイ人数:2 - 7人
プレイ時間:約30分
プレイ時間:約30分
ルール難易度 普通、特に難しい点は無い
日本語化 不要
この作品には軽く遊べるものからじっくり遊べるものまで、実に14ものゲームが収録されています。 コンポーネントは各ゲームで共通して使うものも多く、非常にエコですw とりあえず、ここではコンポーネントだけご紹介します。 まずルールブック 14ものゲームのルールが書かれているだけあって分厚いです(100ページ以上あります) でも決して読みにくくはなく、ストーリー仕立てになっていることもあり 読み物としてもサラサラと読めて非常に面白い内容になってます。 カード 5色(スート)あります。 各色1~12(11は無い)が1枚ずつとB(旗カード)が2枚ずつ 拡大 バックのデザイン つるつるした触感でエンボス加工はありませんが、質感としては非常に良い出来です。 チップやコマ ゲームボードは4枚入っててリバーシブルになってます 拡大 これで全部です。
Knizia, Reiner |
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評価・・・
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ようやく14個のレビューを書けたので、総評ということでちょっとだけ書いてみたいと思います。 全部プレイしてみて、これはちょっとダメかな?と感じた作品が1つもありませんでした。 レビューでBとかCとか付けたのもあるけれど、あくまで個人の好みの範疇という部分が大きくて少なくともゲームのアイデアという点ではどれもが本当に素晴らしいと思う。 ボードの配色やデザインとか、たしかに近年の美しくデザインされたゲームボードなんかに比べたらちょっと見劣りするかもしれないけれど 14のゲームアイデアを表現するために必要な最小限のコンポーネントにとどめられているんだと考えれば、むしろこれで良いんじゃないかと。 ※ちなみに、カードやルールブックの味のある挿絵はむしろ結構気に入ってます この古代ローマに収録されている作品のアイデアは、後発のゲームに存分に生かされていて 歴史の糸車:ツタンカーメン、ブントロンド ローマ七丘:バトルラインなど他にも多数 ハンニバル対ローマ:指輪物語 対決 総督、法廷:クオ ヴァディス スパルタクス:オハイオ(というゲームがあるらしい) 近衛兵:ノミのサーカス、夏のたからもの 商人:メディチ こんな感じだろうか 当然ながら、これらの後続の作品ではコンポーネントも古代ローマのよりも十分に豪華に仕上げられている。 つまり、古代ローマに収録されている作品というのは一種の映画で言えば絵コンテとか、漫画で言えばネームとかそういう見方もできるんじゃないかと思う。 後発の名作がいかにして完成したのか、という過程を垣間見ることができるというか。 でも、これまた当然ながら古代ローマのゲームもその1つ1つがきちんと完成されたゲームになっている。 そういう部分では、ラフスケッチ的な表現は的を得ていない部分があるかもしれない。 むしろ、後発の作品よりも古代ローマのルールの方が良かったかなぁと思えるものもあるし。JohnnyBet ツイート
ところでクニツィア博士は一体どうやって、コンポーネントをこれだけうまく使い回しながら14もの全く違う、しかもどれもが完成度の非常に高いゲームを1つの箱に納めるというウルトラCを成功させたんでしょうね? ゲームは基本的に遊ばせてもらって勝手なことを言うだけで、デザインとか制作とかに携わった経験が乏しいのでよく分かってないことも多いと思うのだけれど システムの根幹を成すアイデアというのは、こういうシンプルなコンポーネントで大体表現できるものなのかもしれないなと思う。 実際、トランプなんかもあれだけで何百という遊び方が存在するんですよね、たしか。 最初はコンポーネントの構成とかは度外視して、単純にこういうシステムって面白いだろうなっていう発想が先にあってそれを単純化されたコンポーネントに当てはめていったというか。そんな感じだったのかなと想像します。 ちょっと雑な話だったかもしれないけれど。 それにしても、ダイスゲームが入ってないというのはちょっと興味深い。 クニツィア博士はダイスゲームも得意なはずなんですけどね、敢えて外されたんでしょうかね。
14の作品、そのどれもが完成された作品に仕上がっていると思うのだけれど、一方でバリエーションルールもたくさん掲載されている。 そのこと自体は別に珍しいことでもなくて、簡易ルールとか上級ルール、人数別バリアントなんかは今でも普通に行われていることだとは思う。 ただし、それらのほとんどはベースはなるべく変えずに、短時間で遊べるバージョンとか、2人でも遊べるようにとか対応可能な状況を増やす目的になっているものが多いと思う。 ところが古代ローマの場合は、ゲームの性質を根底から覆してしまうくらいのインパクトがあるバリアントというか変形ルールもけっこうある。 そういうところを見ると、たしかに1つの作品(ゲーム)として完成されたものではあるけれど、こういう楽しみ方もありますよ的なゆるさというか「未完成」な部分を残している側面もあるように思える。 そういうなんかふわふわした不思議な印象があるゲームでもあって、「完成されたラフスケッチ」とかいうとなんだか妙にしっくりきてしまう。
面白さって一体何なのか?っていうのは答えが非常に難しいのだけれど、その1つとしてよく言われる「ジレンマ」というのがあると思う。 そういうのは、ある1つの要素とかアクションが2つ以上の強い意味を持つことによって生まれる。 すべてに当てはまるというわけじゃないので本当に難しいのだけれど、1回の手番で実行可能な複数のアクションの中からどれを選ぶか悩ましいという類の話とはちょっと違う。 もっとこう、ミニマムな構成要素1つ1つ、上記の例で言えば実行可能なアクション1つ1つがそれをやることによって2つ以上の意味合いで大きな変化とか影響をもたらすかどうか、ということ。 アクションだけじゃなくて、カード1枚が持つ意味合いも縦軸と横軸(大抵は数字とカラー)で面白い違う意味を持つとか。 じゃあ、カードにテキストをいっぱい書いてたくさんの効果を持たせればいいのかというと、もちろんそういうわけでもない。 それらの構成要素同士の組み合わせだったり、その複数の効果同士も互いに影響を及ぼし合うこと。 複雑すぎる効果というのは効果の独立性が強くなってしまいがちで、そうなってしまうとあまり面白くないことが多い。 ついでにテキストを読んでどんな効果なのか理解するのがちょっと面倒だったりすることもある。 つまり、アクションであれ効果であれ、いかにして単独で独立してしまっている要素を無くして他の要素とうまく絡めることができるか? これがポイントの1つになっていると思う。 たとえば「歴史の糸車」の場合だと カードを1枚取る、という極めてシンプルなアクションが 取ったカードの色という視点で見ると、その色について決算(得点の機会)に一歩近づく行為であるのに対して 取ったカードの数字という意味では、ゲームの終了に近づくことを表している。 さらに、そのカードに書かれている数字は得点を表すけれど、状況によってはプラス点になるとも限らない。 その色のカードがすべて取られればプラス点だけれども、数字が先だったらマイナスになってしまうかもしれない。 というように、単純な2つの要素を1枚のカードが持っているというだけじゃなくて、その2つの要素は密接に絡み合っている。 その絡み合い方が自然と複雑な思考を生み出していて面白い。 もう、ルールブックを読んでるだけで十分すぎるくらいワクワクさせてくれるものがありますね。
そんな、ラフスケッチだけれど完成されている、作品集であり、高度なアイデア帳のようでもあるような、もっというとクニツィア博士の頭の中をちょっと覗けるような感じすらするこの「古代ローマの新しいゲーム」というのは、他に類を見ない魅力を持っていると思う。 敬意を込めて、「古代ローマの素晴らしいゲーム」と呼ぶことにします。 2015/09/13